「医師になりたいけれど、実際はどんな仕事なのだろう?」
「どんな進路を進めばいいのか、自分に向いているのか知りたい」
将来の職業として「医師」を思い描くとき、真っ先に浮かぶのはドラマで見るような手術シーンや、病院の診察室で患者さんと向き合う姿かもしれません。
しかし、実際の医師の仕事は診察や治療にとどまりません。病気を未然に防ぐ予防医療、未来の治療法を生み出す研究、さらには地域保健や企業の健康管理まで、多岐にわたるフィールドで人々の命と健康を支えています。
医療は「人命を預かる専門職」としての責任がある一方、高度な知識を学び続け、多職種と連携しながら目の前の患者さんに最善を尽くす、非常にやりがいのある仕事です。
この記事では、医師を目指す中学生・高校生やその保護者の方に向けて、医師の具体的な仕事内容や必要な資質、医学部進学から国家試験・研修までのルート、気になる年収や最新のキャリアトレンドまでをわかりやすく解説します。
1. 医師とはどんな仕事?主な役割と魅力
医師とは、医師法に基づき、病気や怪我の診察・治療・予防・リハビリテーションなどを専門的に行う医療のプロフェッショナルです。
臨床医と研究医の違い
医師の働き方は、大きく「臨床医」と「研究医」の2つに分かれます。
- 臨床医:病院やクリニックで直接患者さんと向き合い、診察・検査・治療を行います。全体の9割以上の医師が臨床の現場で活躍しています。
- 研究医:大学や研究所に所属し、いまだ治療法が確立されていない難病の原因解明や、新しい薬・医療技術の開発にあたります。
多様化する医師の活躍フィールド
病院やクリニック以外にも、医師が活躍する場所は広がっています。
- 産業医:企業で働く従業員の健康管理や職場環境の改善をサポートします。
- 公衆衛生医師:保健所などで地域住民の感染症予防や健康増進政策を担当します。
- メディカルドクター:製薬会社で新薬の開発や安全性の検証を行います。
- 訪問診療医:通院が困難な患者さんの自宅を訪問し、在宅医療を提供します。
【POINT】医療の特性
医師の仕事は「公共性」「不確実性」「高度の専門性」「技術革新・水準向上」の4つの要素が深く関係しています。予期せぬ症状の変化に対応しつつ、最新の医学知識をアップデートし続ける姿勢が求められます。
2. 診療科ごとの特徴とデータで見る医師の仕事
一口に「医師」と言っても、専門とする診療科によって診療対象や働き方は大きく異なります。厚生労働省の調査データをもとに、代表的な診療科の特徴を見てみましょう。
| 診療科 | 主な仕事内容 | 医師数 | 女性比率 |
| 内科 | 薬物療法を中心とした内臓・血液・神経などの診察・治療 | 約117,700人 | 約40% |
| 外科 | 手術を中心とした病気や怪我の治療(消化器・心臓・脳など) | 約35,300人 | 約30% |
| 整形外科 | 骨・関節・筋肉などの運動器の機能改善や外傷治療 | 約22,500人 | 約20% |
| 小児科 | 0歳から成人期未満までの子どもの総合的な診療 | 約18,000人 | 約70% |
| 精神科 | うつ病・不安障害・認知症などの心や脳の症状のケア | 約16,500人 | 約50% |
| 産婦人科 | 妊娠・出産・周産期管理および女性特有の疾患の治療 | 約13,700人 | 約70% |
| 皮膚科 | 皮膚・爪全般のトラブル、アレルギー、美容皮膚科等 | 約9,800人 | 約80% |
| 救急科 | 重症救急患者への24時間体制での緊急処置・DMAT活動 | 約3,900人 | 約40% |
※データ出典:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査(2020年)」より概数算出
内科や外科などのメジャー科に加え、近年ではライフスタイルの変化に伴い、訪問診療やリハビリテーション科、美容医療分野への注目も高まっています。
3. 医師に向いている人・求められる資質
医師として働く上で、学力以外にどのような資質やスキルが求められるのでしょうか。
① コミュニケーション力と共感力
診察の基本となる問診では、会話の中から患者さん自身も気づいていない症状の兆候を探り当てます。また、つらい気持ちを抱える患者さんやご家族に寄り添い、わかりやすく治療方針を説明する「思いやりの心」が不可欠です。
② 探究心と継続的な学習意欲
医学は日々進歩しています。最新の新薬、新しい手術手技、ガイドラインの改定など、一生涯勉強を続けていく知的な向上心が求められます。
③ 体力・精神力と自己管理能力
当直勤務や緊急手術など、医師の仕事はハードな場面も少なくありません。自身の心身の健康をしっかり管理できる自己管理能力と冷静な判断力が大切になります。
4. 医師になるまでの道のり(高校から専門医まで)
医師になるためには、非常に明確かつ厳しいステップを踏む必要があります。最短でも高校卒業から独り立ちまで約10年かかります。
[高校卒業] ──> [医学部医学科(6年間)] ──> [医師国家試験合格] ──> [初期臨床研修(2年間)] ──> [専門医研修・専攻医(3年以上)]
ステップ1:医学部入学(18歳〜)
大学の医学部医学科(6年制)に入学します。国公立・私立ともに最難関の入試突破が必要です。近年では地域医療を支える「地域枠」での選抜も実施されています。
ステップ2:大学での学び(6年間)
- 1〜2年次:教養科目および基礎医学(解剖学・生理学・薬理学など)。ご献体による人体解剖実習も行われます。
- 3〜4年次:臨床医学(内科・外科など)の学習。4年次末に病院実習に出るための共用試験(CBT:知識試験、OSCE:客観的臨床能力試験)を受験します。
- 5〜6年次:大学病院や関連病院での臨床実習(ポリクリ/クリポリ)。実際の現場で指導医のもと患者さんの診療を学びます。
ステップ3:医師国家試験と合格率
6年次の2月に2日間にわたって実施されます。問題数は約400問で、知識だけでなく臨床的な判断力や、選ぶと即不合格に繋がる「禁忌肢」への配慮も求められます。
- 合格率:例年90%〜92%前後で推移(第120回/2026年実施では受験者9,980人中9,139人が合格、合格率91.6%)。
ステップ4:初期臨床研修(2年間)
国家試験合格後、すぐに一人で診療できるわけではありません。2年間の「初期臨床研修(研修医)」が義務付けられており、内科・救急・地域医療などさまざまな科をローテーションしながら基本的な臨床能力を身につけます。
5. 【実例・体験談】医学部・研修医生活のリアル
ここで、実際に医学部を卒業し医師になった先輩たちのリアルな体験談をご紹介します。
【事例A:2年次の進級危機を乗り越えた事例】
「医学部に入って一番の試練は2年次の『基礎医学』でした。試験範囲が膨大で、全30科目中11科目も再試験にかかってしまったんです。テスト前日は『医者になれないかもしれない』と涙が出ました。
救いになったのは同級生との支え合いです。過去問を共有し、みんなで図書館にこもって勉強し、なんとかストレートで進級できました。医学部を乗り越えるには、孤立せず仲間と一緒に励まし合う環境が本当に大切だと実感しました。」
【事例B:研修医時代の過酷さとやりがい】
「初期研修1年目は、覚えることが多すぎて毎日のように指導医に指導されました。当直業務もあり、長時間の勤務になることもありました。
しかし、自分が担当した患者さんが元気に退院されるときの『先生、ありがとう』という言葉で、すべての疲れが吹き飛びました。過酷な時期をともに乗り越えた同期や、厳しくも温かく教えてくれた看護師さんたちとの信頼関係は、一生の財産です。」
6. 医師の年収・働き方とキャリアの現状
受験生や保護者の方が気になる「収入」や「働き方」についても、最新の公的データをもとに検証します。
医師の平均年収(データソース)
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均給与は以下の通りです。
| 区分 | 毎月の決まって支給される給与 | 年間賞与その他 | 平均年収(推計) |
| 男性医師 | 約115.4万円 | 約136.6万円 | 約1,521万円 |
| 女性医師 | 約87.6万円 | 約97.3万円 | 約1,148万円 |
| 男女合計 | 約109.1万円 | 約127.6万円 | 約1,436万円 |
※勤務先(大学病院・市役所・民間病院・開業)、年齢、地域、当直回数などによって差があります。初期研修医の期間は手取り月給25万〜30万円前後からスタートするのが一般的です。
医師の働き方改革と今後の需要
2024年4月より「医師の働き方改革」が本格始動し、長時間労働の是正やタスク・シフト(看護師など他職種への業務移管)が進められています。
また、厚生労働省の医師需給分科会の推計では、2028年〜2033年頃には全国的な医師の総数が需要と平衡に達すると予想されています。ただし、都市部と地方における「医師偏在」や特定診療科の不足問題は依然として続いており、地方や地域医療で活躍できる医師の需要は依然として高い状態です。
7. 医師を目指す学生のための「具体的勉強・準備テクニック」
最後に、今から医師を目指す中学生・高校生が取り組むべき具体策をまとめました。
テクニック①:基礎学力の徹底と「弱点を作らない」学習
医学部入試は全教科において超高得点率が求められます。得意科目を伸ばす以上に、「苦手科目を作らない」ことが鉄則です。英語・数学・理科(2科目)を中心に、高校の早い段階で基礎を完璧に固めましょう。
テクニック②:医療ニュースへの関心と小論文・面接対策
医学部入試では面接や小論文が課されます。「なぜ医師になりたいのか」という志望動機はもちろん、地域医療の偏在問題、高齢化社会における予防医療、医療技術の進歩と倫理課題など、日頃から医療系のニュースに目を光らせ、自分の意見を言葉にする練習をしておきましょう。
テクニック③:情報収集とボランティア・見学体験
オープンキャンパスや、医療機関が実施している「高校生向け一日医師体験」などに積極的に参加してみましょう。実際の現場を見ることで、勉強へのモチベーションが飛躍的に高まります。
まとめ
医師という職業は、患者さんの命と健康を守る非常に重い責任を伴います。医学部入試から大学6年間の学び、研修医生活を経て一人前になるまでの道のりは決して平坦ではありません。
しかし、自分の知識や技術で人の命を救い、患者さんやその家族の人生に寄り添うことができる喜びは、他のどの職業にも代えがたいものです。
まずは日々の学習を積み重ね、医療に関心を持つことから始めてみてください。未来の医療を支えるあなたの一歩を、心から応援しています。
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